結婚、出産、離婚、子どもの受験、親の介護…。人生100年時代に直面する様々なライフイベントを乗り越えていくために必要なのが「お金」です。ただ、日々の生活に追われていると、いざという時のための「マネープラン」を考えていないケースがほとんどではないでしょうか。
Money&You取締役でファイナンシャルプランナーの高山一恵氏のもとに寄せられた相談事例を通じてマネープランを考えていく連載「人生100年のマネー相談」。今回は、岸田首相も対策に乗り出した「年収の壁」をめぐる相談です。夫の扶養から外れて働いていたことがバレて、約60万円もの金額を返還せざるを得なくなった40代パート主婦がやってきました。(JBpress)
(高山 一恵:Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー)
(注:相談者のプライバシーに配慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください)
今回ご相談にやってきたのは、40代のパート主婦B子さん。会社員の夫と中学生の娘さんの3人家族です。B子さんは、当初、夫の扶養の枠内で働くつもりでしたが、たびたび残業することになり、いつしか扶養の範囲を超えて働いていたそうです。でも、B子さんは「どうせバレないだろう」と扶養の範囲を超えたことを夫に報告せずに放置していました。ところが夫の会社にバレてしまい、夫はB子さんに激怒。夫の手取りも減る上に、B子さんも未払いだった税金や社会保険料、医療費などを一気に支払うことに。お子さんの教育費のこともあり、今後の家計を立て直すべく、ご相談にいらっしゃいました。
扶養内で働ける「年収の壁」とは
そもそも扶養とは、経済的な事情で「自力で生活することが困難な家族を養うこと」を意味します。さほど(または全く)稼ぐことのできない配偶者や子ども、高齢の親が扶養に該当します。
扶養には法律によって「健康保険法」と「所得税法」の2種類があり、それぞれ条件が異なります。扶養となることによって所得税や住民税などの税金や健康保険料、国民年金の免除を受けることができます。その範囲内で働くことを扶養内勤務と言います。(妻に扶養されている夫も同様ですが、話をわかりやすくするために、以下は夫が妻を扶養することとします)。
妻が夫の扶養内で働ける年収には、いくつか基準があります。具体的には、次のとおりです。
妻の年収がこれらの壁を越えてしまうと、妻が夫の扶養(税制上の扶養・社会保険上の扶養)から外れてしまいます。そして、扶養から外れると、妻が税金や社会保険料を負担したり、夫の税金の負担が増えたりします。
特に影響が大きいのが106万円・130万円の「社会保険の壁」です。社会保険料を払うことになると、手取りが大きく減ってしまうからです。