根強かった「金持ち優遇」批判

 当初、金融庁は非課税期間を10年、年間の投資枠を120万円という制度を考えていました。これに対し、「金持ち優遇」「国がギャンブルをあおるのか」といった批判が噴出します。税収の減少を懸念した政府自民党の税制調査会にも慎重意見があり、その結果、NISAは非課税期間5年、年間投資枠100万円という、中途半端な制度としてスタートしました。

 NISAの主眼は、長期の積立投資です。毎月積み立てることを想定すると、年間120万円なら12で割り切れて毎月10万円となりわかりやすいですよね。しかし、100万円では割り切れません。「NISAを普及させたくないため、わざと使いにくくしたのでは」とうわさされたほど、当初、NISAは逆風にさらされていました。

日本版ISAの愛称「NISA」を発表する女優の黒木瞳さん(中央)=2013年撮影(写真:共同通信者)

 わかりやすく言えば、NISA誕生の背景には、個人の資産形成を後押ししたい勢力と、税収を減らしたくない勢力の激しい政治的な綱引きがあった、ということです。

 その後、徐々に制度は改正され、年間投資枠が増え、非課税期間も延長されてきました。2016年から投資枠が120万円に拡大され、2018年には新たに「つみたてNISA」が始まります。つみたてNISAでは、少額をコツコツ積み立てるのに適した投資信託の運用に限定することで、非課税期間が20年に延長されました。長期の資産形成を重視する金融庁のこだわりが透けて見えます。

 ただし、つみたてNISAも当初は投資枠を60万円にするという議論もあったのですが、結局はこれも12で割り切れない40万円で決着しました。すでにスタートしていた一般のNISAとの併用も認められませんでした。年間の投資枠だけを比べて、「一般NISAの方がお得」という誤解も生み、長期投資は想定通りには定着しませんでした。

 ようするに、これまでのNISAはかなり妥協の産物で、使いにくい制度だったのです。それが2024年から一気に、「恒久化」を軸に使い勝手のいい制度に変わります。多くの個人投資家が注目するわけです。