50代も「出遅れ」を挽回できる

 では、この「1800万円」という数字をどのように捉えたらよいのでしょうか。

 2019年、金融庁は金融審議会の市場ワーキング・グループの報告書*3で、老後の30年間で約2000万円の資金が不足するという試算を公表し、政治を巻き込む大騒動になりました。私もメンバーとして議論に参加していたのですが、老後に2000万円が不足するというのは平均的な前提を置いた際の数字で、意図したのは年金だけに頼らず長期的な資産運用によって老後資金を確保する大切さを啓蒙(けいもう)することでした。

*3金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について(金融庁)

  その後、試算の前提が見直されるなどしていますが、今でも「老後2000万円」という数字は、安心して老後を過ごすために必要な資金の額として、一定のコンセンサスを得ているように思います。おそらく、新NISAの生涯投資枠1800万円も、この「老後2000万円」が意識されたのではないでしょうか。

 これまで、投資をしてこなかった多くの日本人にとって、1800万円という運用規模は十分なほど大きな金額だと思います。重要なのは、新NISAは年齢に関係なく、積み立てにより1800万円の資産を作りやすくなったということです。

 例えば、20歳から月5万円の積み立てを始めれば、30年で1800万円を投資できます。一方、50歳から月30万円積み立てれば、5年で1800万円に達します。20歳で月5万円、50歳で月30万円を投資できる人は多くはないかもしれませんが、重要なのは一人ひとりのマネープランに応じて、かなり柔軟に積立額を設定できるということです。

 若い時から長期で運用を始めれば有利ですし、出遅れた人も積立額を増やせばキャッチアップできます。従来のつみたてNISAでは、年間投資枠が40万円でしたので、最大でも月3万3333円までしか積み立てられませんでした。これは、大きな違いです。