「攻撃は最大の防御」がイスラエルのDNA
反イスラエルを掲げパレスチナ・ガザ地区を根城とするイスラム武装組織ハマスが、今年10月7日にイスラエルに奇襲攻撃をかけて間もなく1カ月になる。
イスラエル側に約1400人、パレスチナ側に8000人超の犠牲者を出し、イスラエルのネタニヤフ首相は「ハマスを根絶する」と報復を誓う。予備役も含め50万人近い国防軍(IDF)と、数千台の国産メルカバ戦車を用意して大規模な地上侵攻の構えを見せる。
ガザの電気、水道、通信、補給路を遮断、「兵糧攻め」を強化するとともに猛烈な空爆も実施し、10月下旬に入ると戦車による小規模な地上攻撃の回数も増加している。
10月28日には「戦争は第2段階に入った」と、ネタニヤフ氏は強調。「あとは大規模地上作戦実行のタイミングを待つばかり」と示唆している。
イスラエルの“後ろ盾”となっているアメリカのバイデン政権は、民間人の犠牲者が多数になる事態を懸念。大規模地上作戦をなるべく避け、代わりに精密誘導爆弾・ミサイルによる空爆や、少人数の特殊部隊によるピンポイント攻撃を勧めていると言われる。
だが、文字どおり「戦争の歴史」と揶揄されるイスラエルの歴史をひもとけば、「やられる前にやる、やられたらやり返す」が国是であることは明白で、ネタニヤフ政権が大規模地上作戦を放棄するとは考えにくいとの見方が専門家の間では主流だ。
詳細は割愛するが、同国は1948年5月14日の独立以前から武装闘争を続けており、パレスチナを統治するイギリス軍に爆弾闘争を続け、半ば強引に独立を勝ち取ったほどだ。
独立に際してはもとの住人であるアラブ系パレスチナ人を放逐し、ユダヤ人入植地を急拡大。これに対し「同胞パレスチナ人への迫害は許せない」と、エジプト、ヨルダン、シリア、レバノンなどイスラエルを囲むアラブ諸国は憤慨し、独立翌日の5月15日に一斉にイスラエルに宣戦布告する。「第1次中東戦争」(パレスチナ戦争)の勃発である。
辛くもイスラエルは防戦を果たすが、「周りは全部敵。一度でも戦争に負ければユダヤ人は地中海に放り出され溺れるしかない」というすさまじいほどの恐怖心を味わったとも言われる。
それ以前に彼らには、数千年にわたり国家を持たない“流浪の民”として差別を受けてきた暗い過去がある。加えて第2次大戦中はヒトラー総統率いるナチス・ドイツの「ホロコースト」(大量虐殺)で、600万人以上の同胞が殺害されるという大惨事も経験している。
それだけに「独立国家=安住の地」への執着は、日本人の想像をはるかに超える。彼らにとって「攻撃は最大の防御」であり、過剰防衛や先制攻撃(予防戦争)も容認されるというのが、どうやらイスラエルのDNAなのかもしれない。