(国際ジャーナリスト・木村正人)
イスラエルの長年の失敗が破壊的な攻撃を招いた
[ロンドン発]イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム武装組織ハマスの戦争で1400人が殺害され、230人が人質に取られたイスラエルの報復は一段と激しさを増している。ハマスが運営するガザ保健省によればガザの死者は8000人を超えた。
報復の激しさは、ハマスの奇襲を予想できなかった後ろめたさの裏返しだ。
米紙ニューヨーク・タイムズ(10月29日付)はイスラエルがハマスの意図を見誤った背景を詳細に検証している。
NYT紙は「ハマスに対するイスラエルの長年の失敗がいかにして壊滅的な攻撃を招いたか――イスラエル当局はハマスによる10月7日の攻撃の規模を完全に過小評価していた」と題し、10月7日午前3時、イスラエル国内治安当局(シンベト)トップ、ローネン・バー氏は眼の前で起きていることがハマスの演習かどうか判断がつかなかったと伝えている。
検証記事によると、イスラエルの情報機関や国家安全保障当局は「ハマスには戦争をする気はない」と確信していたという。イスラエルのシギント(通信や電子信号を傍受)部隊は1年前にハマスの携帯無線交信の傍受を中止した。その隙をついてハマスの武装集団は少なくとも1年間、イスラエルの情報機関に気づかれずに大規模な訓練を実施していた。