ドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受けた亜細亜大学のエース草加勝投手(写真:スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト)ドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受けた亜細亜大学のエース草加勝投手(写真:スポーツニッポン新聞社/時事通信フォト)
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この秋、初戦敗退ばかりの無名高校が甲子園を勝ち取るノンフィクション『下剋上球児』(菊地高弘著)がテレビドラマ化され話題を集めている。近年は小学生の頃から年代ごとの代表チームが確立され、そこに名を連ねるようなスター選手を集めた強豪校が優勝を争う流れがある。そうしたヒエラルキーを覆すことの難しさがわかるだけに共感を呼ぶのだろう。先日のドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受けた亜細亜大学のエース草加勝投手の野球人生にも、そんな「下剋上」を思わせるストーリーがある。(敬称略)

【注目の大学生投手を追う】
(1)ドラフト1位指名予想、「大谷2世」西館勇陽投手の球質は「計測不能」〜花巻東出身の中央大生、「令和の怪物」との再会へ闘志
(2)ドラフトのスカウトを悩ませる村田賢一投手、最速追わない「制球のバケモノ」〜「個性」勝負の明治大生、球速至上主義を「見返したい」

 草加勝へのインタビュー時、「高校時代の話を聞かせてください」とテーマを振ると、こちらの意図をすぐに察して、「それ、多いんですよ」と穏やかにほほ笑む。

 今年のドラフトで1位指名が集中した大学生投手たち。彼らが高校3年生の時、「高校BIG4」と呼ばれる4人の投手がいた。大船渡高校の“令和の怪物”佐々木朗希(現千葉ロッテ)。星稜高校の“甲子園準優勝投手”奥川恭伸(現ヤクルト)、横浜高校の“大型左腕”及川雅貴(現阪神)。そして創志学園の“吠える豪腕”西純矢(同)。彼らはこの世代のトップランナーとして早くからクローズアップされていた。

 草加は高校時代、BIG4の一人、西純矢の2番手投手だった。取材者も皆、彼を書く上でのポイントはそこだと思っているようだ。

 中学まで軟式野球でプレーしていた草加は、いくつかの強豪校からの誘いを蹴って、3歳違いの兄・稔が3年間を過ごした創志学園に入学する。入学前に練習参加のためグラウンドに行くと、一緒に呼ばれていたのが、硬式の15歳以下日本代表(NOMOジャパン)で、全国優勝も経験している西だった。

 西は高校でも初めから別格の存在だった。

「ボールのキレもスピードも入学した時からズバ抜けていたし、バッティングもすごいし、すべての面で僕より何ランクも上の選手でした」と草加は入学当時を振り返る。