「コントロールのバケモノ」明治大学の村田賢一投手(写真:時事)「コントロールのバケモノ」明治大学の村田賢一投手(写真:時事)

今年のドラフト指名候補の中で、もっとも評価(判断)が難しいとスカウトたちを悩ませているのが明治大学の村田賢一投手だ。大学野球界ではトップレベルの投手であることは、残してきた成績が証明している。だが、プロ注目選手によくある「最速150何キロ」という触れ込みが村田にはない。村田の武器は抜群の制球力から織りなす投球術にある。(敬称略)

(矢崎 良一:フリージャーナリスト)

【注目の大学生投手を追う】
(1)ドラフト1位指名予想、「大谷2世」西館勇陽投手の球質は「計測不能」〜花巻東出身の中央大生、「令和の怪物」との再会へ闘志
(2)ドラフトのスカウトを悩ませる村田賢一投手、最速追わない「制球のバケモノ」〜「個性」勝負の明治大生、球速至上主義を「見返したい」
(3)ドラフト中日1位指名、「もっとやれる」亜細亜大・草加勝投手が誓った下剋上〜創志学園のライバル、西純矢と「投げ合ってみたい」

 東京六大学の選手取材で「一番打ちにくい投手は?」と聞くと、村田賢一の名前を挙げる者が多い。メディアの注目度やインパクトという面では違った名前も出てくるが、試合における実力では、六大学のナンバーワン投手と言っていいだろう。
  
 村田は「被打率とかデータを見たら、(そうした評価は)驚くことではないです」と冷静に言う。おごりでも強がりでもない。

 リーグ戦で本格的に投げ始めたのは3年生の春シーズンから。3年春が5勝1敗、秋が3勝0敗、4年春も3勝0敗。防御率は2.20(3年春)、1.50(3年秋)、0.80(4年春)とシーズンごとに数字が向上。この間、明大は85年ぶりとなるリーグ3連覇を果たし、3年秋の明治神宮大会決勝戦では国学院大を1-0で破って日本一。村田は4安打無死四球の完封勝利で胴上げ投手になっている。まさに難攻不落のエースとして神宮球場のマウンドに君臨してきた。

 数字を見るとすごさは一目瞭然だが、そのピッチングスタイルには少々説明が必要になる。

 ストレートがしっかり低めに制球され、カーブ、スライダー(縦横2種類)、フォークボール、チェンジアップ、ツーシーム、カットボールと多彩な変化球を操り、それをストライクゾーンの両サイドに投げ分ける。それでいて、45イニングを投げた4年春の与四死球が5(1試合平均1個)と、大学生レベルでは突出したコントロールを誇る。

 チームの後輩や、代表合宿に行った時に他チームの投手から「なんでそんなにコントロール良いの?」とか、「どうしたらコントロールが良くなりますか?」と聞かれることがあり、村田は返事に困ると言う。

「自分としては、(コントロールが)悪くなったことがないからわからないんです。練習でもコントロールを意識して投げるということはないですね。よく指先の感覚と言われる方はいますけど、僕はリリースじゃなくて、もう身体全体がコントロールを作るものと思っているから、そこが根本的に違う気がします」