9月3〜5日、福島で東都大学リーグ(プレミアムユニバーシティズ22)の開幕戦が開催された(写真提供・東都大学野球連盟)

 大学野球界において、東京六大学に続く知名度と実績を誇る東都大学リーグ(プレミアムユニバーシティズ22)。1部リーグから4部リーグまで22校の大学で組織され、上位校は毎年のように選手をプロ野球に送り出している。それだけに「戦国東都」と異名を取るほどの激しい優勝争い、入れ替え戦が絡んだ順位争いが毎シーズン繰り広げられることで野球ファンに知られている。

 この東都リーグが、近年、次々に斬新な施策を打ち出し、注目を集めている。改革の背景には、野球だけでなく、大学スポーツの直面する問題が見え隠れする。内情を3話にわたってレポートしていく。

(矢崎 良一:フリージャーナリスト)

 9月3~5日、福島県営あずま球場とヨーク開成山スタジアムで開催された東都大学秋季リーグ開幕戦。野球部のユニフォームを着た地元の小中学生や、首都圏から駆けつけた熱心なファンなど、3日間で約2万5000人の観客を動員し、1点を争う好ゲームと試合前後に企画されたイベントで球場は熱気に包まれていた。

 これまで神宮球場を主要舞台としてリーグ戦を繰り広げていた東都が、春の開幕戦の大分県に続き、2季連続となる東京を離れての公式戦開催。来年度以降も、すでに地方での開催が内定しているという。

 春の大分開催が発表された当初は前例のないことだけに、「何を考えているんだ? 失敗するに決まっている」と否定的な見方をする関係者も多かった。そんなネガティブな予想を覆す集客と球場の盛り上がり、内外への大きな反響。イベントとしては大成功と言っていいだろう。

 この成功の裏には、新たなプロジェクトの推進のためにスクラムを組んで動いてきたスタッフの存在がある。その旗振り役として、先頭に立っていたのが東都大学野球連盟の西村忠之事務局長だ。

 2021年12月15日、東都連盟による記者会見は各方面に衝撃を与えることになった。席上、西村は翌春のリーグ開幕戦の大分開催の発表に伴い、現在、連盟が直面する問題について説明している。

「連盟の財政が危機的状況にある。このままでは破産してしまう。少しでも収入を増やせる方法を考えていきたい」

 東都連盟の財政問題は、関係者の間では数年前から周知の事実だった。

 そもそも連盟の収入というのは、各大学が負担する分担金、公式戦の入場料、スポンサーからの広告料などから成り立っている。1931年創設の老舗リーグとはいえ、リーグの本塁打記録を塗り替えた井口資仁(青学大 現・千葉ロッテ監督)や、甲子園優勝投手の東浜巨(亜大 現・福岡ソフトバンク)といった人気選手がいる時には注目度も高まるが、球場使用の関係で平日開催となるため、観客動員の面では常に苦戦を強いられていた。

東都の強豪、亜細亜大学を経て福岡ソフトバンクホークスに入団した東浜巨の亜細亜大学時代の投球(写真:望月仁/アフロ)

 広告収入も頭打ちとなり、シーズンのたびに赤字を計上。それまでの貯えを吐き出すことで、なんとか運営をまかなってきた。

 西村は就任時に連盟の会計帳簿を見て愕然としたという。毎年約2000万円の赤字が6年間続いていた。口座に残っている繰越金額を見ると、今のままの運営を続けていたら、あと数年で破産するのが確実な状況。早急な改革の必要性に迫られていた。