習近平の政敵排除のため、との見方も
許家印や恒大集団を「ホワイトグローブ」(資金洗浄代行者)に利用してきたのが、太子党の権貴族(資本を持った権力者、あるいは権力と結びついた資本家の総称)らとされる。その代表格が曽慶紅ファミリー、つまり習近平にとっての最大の政敵だというわけだ。
こう考えると、許家印連行が今行われた理由は以下のように想像される。
(1)許家印が表向き、習近平の指示に従って保交楼完遂を目指して努力しているふりをしていたが実はひそかに海外への資産移動をたくらんでいたことがばれた。
(2)長年続いていた習近平vs曽慶紅ファミリーの権力闘争がいよいよ大詰めとなり、曽慶紅ファミリーの最大の弱点となる許家印の身柄を押さえる段階に入った。
だが、さらになぜ今のタイミングなのか、ということに注目して考えると、やはり、今の中国の深刻な経済苦境が関与しているのではないか、と私は想像する。
習近平は8月の秘密会議、北戴河会議の場で、曽慶紅や遅浩田ら長老たちから、その失策の責任を問われて、側近部下たちに逆切れしたという話が伝わっている。今の中国党内では、誰の目から見ても明らかな経済政策の失敗、不動産市場救済の失敗について、その責任の押し付け合いが起きていると想像される。
長老の間でも、官僚の間でも、そして民間社会の間でもじわじわと、習近平の失敗ではないかという空気が濃くなっている。なぜなら習近平は唯一無二の独裁者であり、すべての政策の最終決定権は習近平一人が握っているのだ。