マネーロンダリングのスキームを活用したか
ここで元経済記者で在米華人中国問題研究者でもある何清漣の分析が興味深い。
恒大が習近平の要請する『保交楼』政策を完遂するためには、銀行からさらに2500億元から3000億元を借りなければならなかった。そのカネはどこから引っ張るのかと考えたとき、許家印は海外で資金調達をする方法を、2014年から導入されている『内保外貸』(クロスボーダー保証外貨管理規定)を利用することで実現しようとしたのではないか、という。
内保外貸とは簡単にいえば、中国国内の不動産などを担保に、外国の金融機関から融資を受ける方法だ。中国の金融機関に不動産を担保にして、海外の銀行に対する担保保証を発行してもらう。外国の銀行が中国国内の不動産を抵当にして融資する場合、本来ならその融資が焦げ付いても、その担保清算の強制執行を行うことはできない。これを中国の銀行が責任をもってこの担保物件を清算することを保証し、中国の銀行が先に外国の金融機関に融資分の金額を返済し、あとで担保を強制差し押さえして清算する。
だが、この方法は実は、マネーロンダリングや資金移動の常套(じょうとう)手段に使われていた。
たとえばある人物が、上海の不動産3000万人民元相当を上海A銀行に抵当に入れ、その後上海A銀行が米国B銀行にクロスボーダー保証を発行する。A銀行はこの人物が抵当に入れた3000万人民元相当の不動産の7割の2100万人民元相当の外貨融資の保証を米国B銀行に対して行い、B銀行はその人物にドル建てで融資する。その人物が期日までに返済しなかった場合、上海A銀行が米国B銀行に2100万元相当ドルを支払うと同時に、担保の不動産清算の強制執行を求める訴訟を地元の裁判所に起こすことができる。
その不動産を清算すると約3割分の金が上海A銀行に入る。米国B銀行は元金を保証してもらえる。そして、上海にあった不動産は、事実上換金されて米国に移動したことになる。