中国不動産大手・恒大集団の創業者が警察に連行された(写真:CFoto/アフロ)中国不動産大手・恒大集団の創業者が警察に連行された(写真:CFoto/アフロ)
  • 中国の不動産大手・恒大集団の創業者である許家印が9月27日、警察に連行された。これに前後して、幹部のほとんどが身柄を拘束されたという。
  • 金融システムに与える影響の大きさを懸念し「大きすぎて倒せない」と言われてきたが、創業者連行などの背景には海外への資金移動疑惑や、政敵の排除に利用されたとの説がある。
  • だが、不動産バブルの崩壊をはじめ中国経済は失策続きで、習近平が自らの失敗のスケープゴートにしようとしているという見方が妥当だろう。

(福島 香織:ジャーナリスト)

【関連記事】
「次は李強首相」との噂がにわかに拡散、中国・習近平の大粛清時代に突入か(9月30日付、JBpress)

 中国の民営不動産デベロッパー大手である恒大集団の創業者・許家印が9月27日、警察に連行された。その後の米ウォールストリート・ジャーナルの報道によれば、資産を海外に移動した容疑がかけられているようだ。

 許家印はパスポートと身分証を警察に提出させられ、出国禁止措置のうえ誰とも面会や連絡ができない状況にあるという。中国のポータルサイト「捜狐」のニュースでは、許家印が手錠をかけられて連行されたという目撃証言もある。許家印連行に前後して、恒大集団幹部のほとんどが相次いで身柄を拘束されている。国家主席の習近平はついに、恒大集団をつぶす決断をしたのだろうか。

 恒大集団は、習近平が2020年に開始した過激な「不動産バブル退治政策・3つの紅線」で、2021年にデフォルトに直面した。しかし、破産することも許されなかった。

 同社には、顧客から前金を受け取りながら資金ショートし、工事が中断したままの野ざらし状態で引き渡しができない未完成物件「爛尾楼」が大量にあった。許家印ら幹部は、これらをなんとしても完成させて3年以内に顧客に引き渡す「保交楼」任務の責任を負わされていた。それが今になって、ほぼ全員警察に身柄を拘束された理由は何だろうか。

 かつてアジア第一の富豪とよばれた許家印が今陥っている真の苦境の背後について分析してみたい。