2014年、日本創生会議が「消滅可能性都市」を発表した。それによると、全国の1799市区町村(2014年当時)のうち約半分の自治体が2040年までに人口減少および少子化によって消滅する。あなたの愛する故郷も、2040年までに消滅してしまうかもしれない。
徳島県神山町もまた、2014年の日本創生会議の発表で消滅可能性都市の一つとして名前が挙げられた。ところが、神山町には多くのIT企業がサテライトオフィスを作り、移住希望者向けの賃貸物件は不足状態だ。しかも、2023年4月には「神山まるごと高等専門学校」が開校。日本では19年ぶりの高専の新設である。
消滅可能性都市といわれた神山町がなぜ賑わっているのか。『神山 地域再生の教科書』(ダイヤモンド社)を上梓した、篠原匡氏(作家・ジャーナリスト・編集者)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──本書の舞台である神山町とは、どのような町なのでしょうか。
篠原匡氏(以下、篠原):神山町は、徳島県の真ん中にある町です。人口はだいたい4800人程度。徳島市や徳島空港から車で1時間もかからないので、田舎にしては利便性も悪くありません。
もともとは林業や農業を中心にした、半分自給自足のような暮らしを営む典型的な中山間地でしたが、高度経済成長期以降、外国産材の輸入が増加したことで林業は衰退し、今は農業や建設業などが主な産業になっています。
ちなみに、徳島県の特産品であるスダチは神山が発祥で、県内でもトップシェアを誇っています。ただ、神山で全国的に有名なものと言えば、スダチのほかにはお遍路さんで知られる四国八十八カ所霊場の焼山寺(12番札所)ぐらいしかありません。
そういう意味では観光資源に恵まれているわけではありませんが、都会のIT企業に対するサテライトオフィス誘致を始めた10年ぐらい前から「地方創生」の文脈で注目を集めるようになりました。
実際、コロナ前の2019年に一度行きましたが、移住者や視察の人で盛り上がっていました。その流れはコロナで一時的に止まったようですが、最近は高専もできたので、また賑わっていますね。
──2023年4月、神山町に「神山まるごと高等専門学校」(以下、神山まるごと高専)が開校。44人の一期生が入学しました。
篠原:神山まるごと高専設立の立案者は、営業DXサービスを手がけるSansanの創業者で現CEOの寺田親弘さんです。高専設立プロジェクトは、Sansanがサテライトオフィスを神山町に置いていたこと、寺田さんが教育に関心を持っていたことからスタートしました。
──なぜ高専だったのでしょうか。