「発達障害を治す」ために10万円以上の入会金
──親はもう、自衛するしかないですね。
成田:そうなのですよ。だからこそ、親御さんには根拠に基づかない不安に踊らされてほしくないという危機感は医者として強く持っています。発達障害を疑われる子どもは、「治す」というより、生活リズムを確立すると症状が改善するケースがかなり多いのです。
人間が大人になっていく上では、脳の発達が極めて重要です。「発達障害かも」と疑われる子どもの中には、生活リズムの乱れに起因して、脳の発達が遅れている子どもがたくさんいます。
今はネットで簡単に調べられる発達障害のチェックリストのようなものが出回ってしまっています。こうした情報に安易に飛びつくと、学習・行動面で問題が起きている本当の原因である「生活習慣の改善」にまで頭が回らず、即効性があるように思ってしまう薬に頼りがちなのです。
一人の医者としての意見ですが、必要ない投薬というのは、基本的に行うべきではないと思います。私自身、小学校4年生未満の子どもには薬を処方しませんし、4年生以上でも、親ではなく子どもの同意がなければ基本的には薬は出しません。対処療法よりも、生活習慣の改善という根本を治すのが先決だからです。
リタリンの乱用がアメリカで大問題になったのも、製薬会社にとってその商品がコストに見合って大量生産できるドル箱だったという意味合いが強いのです。
──発達障害が、一つのビジネスになっている可能性があると。
成田:実際に、私のところにもある団体から講演会のオファーが来て、破格の報酬を提示されたことがあります。怪しいなと思って団体を調べてみると「子どもの発達障害を治療します」とうたっている組織で、子ども1人あたりの入会金が10万円以上でした。もちろん講演は断りましたが、そういったかなりグレーな営利団体も存在するのです。
あるいは発達障害の子どもはギフテッドである可能性が高いから、お子さんを天才にさせますよなどと言って、非常に高額な月謝を請求する塾もあります。くれぐれも気をつけていただきたいと思います。