損保会社の指定工場は契約者にとってよい修理工場か?

――今回、損保各社が積極的に入庫を勧めていた「指定工場」で、とんでもない不祥事が発覚したわけですが、そもそも、損保会社が紹介する「指定工場」とはどのような基準で選ばれているのでしょうか。

松永 一言でいえば、損保会社にとって、①収保(収入保険料)というメリットが大きいこと、②修理費用が廉価で損害率が抑制できるというメリットがあること、このいずれかを満たしていることが重要なポイントです。これは、業界内では周知の事実です。

――お客様のメリットではなく、あくまでも自社のメリットを重視しているということでしょうか。

松永 そのとおりです。事故車を1台紹介して入庫させると、自賠責を5件獲得できるというアルゴリズムがあることは、今回の事件で露呈しました。また、損保ジャパンの白川儀一社長の辞任会見でも、損保ジャパン側の修理見積りと、ビッグモーター側が提示する見積りに5〜7%以上の乖離が生じて問題だったという発言がありました。つまり、損保会社側で計算した見積りよりも高くなる修理費は問題視し、それよりも廉価であれば問題ないということを言っているわけです。

――板金や塗装、メカの修理技術が優れている、といった視点は重視されないのでしょうか。

松永 自動車のメカニズムがめざましく進化している中、修理工場を紹介する損保会社の担当者が、その車両の損害の修理に適した工場であるかどうかを判断できるほどの高度な知識や情報を持っているとはとても思えません。

自動車の高度化が進み、修理見積が適切かどうかは素人にはわかりにくくなっている自動車の高度化が進み、修理見積りが適切かどうかは「素人」にはわかりにくくなっている