メーカーの修理書に即した修理作業を損保が拒むケースも
――車の修理見積りが適正か否かは、素人にはなかなかわかりませんが、業界の中でも適正な見積りは難しいのですね。
松永 そもそも修理費用の算出根拠は、自動車メーカーが提供している修理書に則っており、それに従って作業を行うことが前提だと思います。ところが、損保会社は、自動車メーカー側が指定している修理作業に沿った見積りに対して、修理費を抑制するために協定を拒む場合があります。
――協定を拒まれてしまうと、修理自体がなかなか進まないということですよね?
松永 そういうことです。実際に東京海上日動は、自動車メーカー側の指定している修理作業に則って見積りを提示した修理工場に対して疑義を唱え、4カ月間も修理作業に着工できないという状況を生みました。この契約者は代車(レンタカー)特約を付帯していたにもかかわらず、協定できないが故に修理が行われず、結果として事故車に乗り続け、損傷部分に錆が発生してしまったそうです。
【参考記事:外部サイト】「自動車保険」が使えず待たされてサビが発生…進化するクルマの修理見積は、損害調査のプロでも間違えるほど難しい( CAR CARE PLUS)
――なるほど、損保会社のほうで必ずしも正しい修理費を算出できるとは限らないということですね。
松永 はい。このケースでは、見積りを確認に来た東京海上日動の専門家が自動車メーカーの修理書を理解していなかったのですから、正しい修理作業がわかるわけがありませんし、当然、正しい見積りが算出できるはずもありません。