修理工賃の時間単価にも大きな格差が

――自動車メーカーの定めた修理作業自体も理解していない損保会社があるとは驚きですが、一方で、自賠責など収保の大きい販売代理店を優遇するために、修理の時間単価も相当な差をつけている実態があるそうですね。

松永 そのとおりです。これも大変深刻な問題で、実際に、自動車販売を主業にして大きな収保を持っている販売代理店などには、高額な時間単価の修理見積もりに基づく保険金を支払っている実態があります。

――聞くところによると、A社の工賃は1時間1万数千円、B社は約5000円、それほどの差があるようですね。

松永 そうなんです。また、損保会社はその販売代理店では実際に修理をせず、下請けの修理工場に修理を丸投げすることがわかっていても、大きな収保を持つ販売代理店に入庫誘導することで、修理費の差益を提供しています。その結果として全体の保険金支払いを大きく押し上げることになり、結果的に、損害保険を利用していない契約者も含めて不利益を与えていると思います。

――まさに、修理の世界にも歴然とした「二重価格」が存在するのですね。損保会社は少々高い工賃を払ってでも、自賠責などの収保を得ることにメリットを見出しているとしか考えられないのですが、先日の会見で損保ジャパンは、「自賠責は基本的にノーロス・ノープロフィット(赤字も黒字もなし)なので、社としての利益は一切ない」「社費はすべて経費として相殺されている」と答えていました。

松永 白川社長をはじめとする損保ジャパンのあの会見には違和感を覚えました。たしかに、「ノーロス・ノープロフィット」を謳ってはいますが、損保会社にとって、自賠責保険は明らかに「プロフィット」のある保険だと思います。7月の記事でも指摘したとおり、「社費」は営業費として人件費などのコストが計上されているわけですから、利益と言って過言ではないと思いますし、「運用益」はまさに利益そのものでしょう。