才能がある人に見られる2つの特徴

安藤:能力に実体はありません。脳活動がある課題に向かうときに働いているときの確率的な現象です。でも、一般的にはある知識を習得し、それを使いこなしている場合、その「能力」があると言われます。

 例えば、「言語能力」は、言語知識を覚え、それを使えることを意味しています。「計算能力」は計算の方法を学び、実際に計算ができるということです。

 知識を習得するにあたっては学習が必要です。能力を獲得するには、学習をするための環境が必要になります。学習の環境としては、共有環境としては家庭、非共有環境として学校などが挙げられます。

 さらに、学習をしていく過程で、どの程度努力をするのか、しないのかという点については必ず遺伝的な影響が表れます。学習対象、例えば、ピアノや将棋、そろばんなどに対する趣味嗜好は人それぞれです。いわゆる「向き不向き」「素質」などとも呼ばれます。これらは、遺伝の影響を受ける要素の一つです。

 努力を続けられるのか否か、という性格もまた遺伝の影響を受けています。

 とはいえ、能力は遺伝だけでは決まりません。先ほど申し上げたように、学習の場である共有環境、非共有環境にも影響を受けます。

 次に、才能についてです。

 この本の中では、才能を「能力の中で社会的にとりわけ突出しているとみなされている能力」と定義しています。

 才能がある人には、主に2つの特徴があります。まず、最初からある程度うまくでき、学習能力が高いという点。学習能力が高いということは、同じ経験をさせたとき、他の人と比較して習得される技術や知識量が圧倒的に高いということです。したがって、上達速度が異常に速い。

 また、才能といった場合には、まだ開花していない能力というニュアンスを含む場合もあります。突出している能力を発揮する可能性が高いが、まだ学習が追い付いていないという状態です。

 才能は、既に開花しているか否かという軸と、社会的に非常に突出しているか否かという2軸を有しています。ただ、一般的に、既に実現されている超越した能力を持つ人が「才能がある人」と呼ばれる傾向にあります。