法制度の抜け穴を見つけるAIも登場

 あらゆるルールには、それを回避する方法、すなわち抜け穴が生じてしまうものだが、脱税はそれによる悪影響が見えにくいこともあってか、税を納めるのを合法的に回避する方法、いわゆる「節税」が積極的に模索される状況にある。

 もちろん、決められたルール内で自己の利益を追求するのは何ら非難されることではないが、抜け穴を悪用して、多額の税金逃れをするケースも見受けられる。

 しかし、ルールが静的な文章である以上、それが現実世界でどのように解釈され、運用されるかを事前に予測するのは難しい。そこでAIの出番というわけだ。

 ジョンズ・ホプキンス大学によれば、同大学のコンピュータ科学者や、法学教授らからなる研究チームが「Shelter Check」というシステムを開発している。これは一種のスペルチェッカーのようなもので、「議会や国税庁、あるいは裁判所が提案された税法や裁定をスキャンすることで、意図せずに設けてしまいそうな抜け穴を見つけることができるソフトウェア」だそうだ。

Shelter Checkに関するリリース

 いったいどのようなものか。実際のサンプルなどは公表されていないが、研究チームはGPT-4(ChatGPTの土台となっているAIのモデル)などの技術を取り入れることを検討していると説明されているため、ChatGPTで検証してみよう。


拡大画像表示

 一般向けに公開されているChatGPTでは、違法行為に対する助言が生成されることを回避するため、一定のフィルターがかけられている。そのため、上記の画像にあるように歯切れの悪い回答となっているが、それでも「アルコール度数を低く抑える」や「原材料や製法を変更する」といった節税策が示されている。

 この程度では「抜け穴」とは言えないし、専門家でなくてもすぐに思いつきそうな内容だが、逆に言えば「誰もが思いつきそうな内容」を自然な文章で提案してくれるAIは既に実現されているわけだ。

 より専門的な指摘ができるようにAIをチューニングしていけば(そこにはもちろん前述のフィルターを外すことも含まれる)、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者チームが目指すAIはすぐに実現されるだろう。