築山殿と信康の「クーデター説」を採用せず
そうなると、今回のドラマでは、築山殿と信康の事件について一体どんな見解が打ち出されるのか。注目が高まるなか、いよいよ瀬名が動き出したのが、今回の第24回「築山へ集え!」であった。
ドラマの冒頭から、築山殿は武田家の人間と接触し、交流を始めたことから、信康と築山殿のクーデター説をとったかと思いきやそうではなかった。
ドラマでは、築山殿が長年胸に秘めていた夢が語られる。それは、戦をなくして、各戦国大名が手を取り合い、自分たちの土地ではとれないものを物々交換によって補い合い、平和的な外交を行うというもの。同じ通貨を用いての経済圏の構想まで飛び出して、築山殿は家康らに頭を下げてこう言った。
「どうかわたくしたちと、同じ夢を見てくださいませ」
築山殿の頬には、涙が一筋流れる。感動的なシーンのように見えるが、すでにこの段階で、築山殿は信康と共に、各方面へ勝手に働きかけていた。不穏な雰囲気を信長に指摘されて、家康が岡崎に向かったところ、築山殿から壮大な構想を打ち明けられることとなったのである。
まさかの事後報告を受けた家康だったが、意外なほどすんなりとそれに乗り、家臣たちもそんな家康に追従。武田と手を結びながら表面上の戦を続け、信長には内密にしたまま各方面と連携を進める。そんな予想外の展開となった。
築山殿の真意を知った家康が「そなたは途方もないことを考える」とこぼす場面があったが、視聴者も同様の感想を持ったことだろう。