「私はプーチン大統領と話をした。プリゴジンとの約束を守るようもう一度求めた。彼は言った。“約束したことはすべて実行する”。こうしてカオスは防がれた。起こるかもしれなかった危険な事態は巻き戻された」。ルカシェンコの仲介で、1日に780キロを走破したプリゴジンの「正義の進軍」は止まった。

クレムリンは非合法の民間軍事会社ワグネルに「全額出資」してきた

 26日の国民向け演説で自分が「プリゴジンの反乱」を抑え込んだと胸を張ってみせたプーチンの虚勢はルカシェンコの証言で覆された。FSBは27日、プリゴジンに対する武装反乱罪での告訴を取り下げた。

 それでもプーチンはプリゴジンを貶めるため、クレムリンが非合法の民間軍事会社ワグネルに約1951億ルーブル(約3270億円)を「全額出資」してきたと初めて公に主張した。

ワグネルがベラルーシに到着した翌日、黒いサングラスをつけ、ロシア連邦南端のダゲスタン共和国のナルイン・カラ要塞を訪問したプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

 2014年以来、プリゴジンはクレムリンの外交政策とワグネルの利権獲得をリンクさせてきた。シリア、スーダン、中央アフリカ共和国、リビア、マリ、ベネズエラ、モザンビークなど数多くの紛争や不安定地域で、ワグネルは(1)天然資源のアクセス確保、(2)米欧の影響力が弱い地域で存在感発揮、(3)訓練活動に従事してきた。

 ワグネルが関与したマリでは数百人の虐殺が報告されているのだ。満天下に大恥をさらしたプーチンは逆上し、血塗られた傭兵部隊ワグネルと最後の一線を画す冷静ささえも失ってしまった。プリゴジンとワグネルはルカシェンコの手に渡り、無能で年老いたプーチンはいよいよ「裸の王様」になった。

「ハルマゲドン将軍」ことセルゲイ・スロビキン副司令官が事前にプリゴジンの計画を知っていたと米紙ニューヨーク・タイムズは報じた。スロビキンは24日から行方が知れず、ロシア当局に拘束されたとの報道もある。事態は急展開している。