「プリゴジンは高揚していた。完全に高揚していた」

 ルカシェンコはその日の午後までにロストフにいるプリゴジンと話すのに使える3つのチャンネルを手に入れた。「このチャンネルを使って3回目、4回目の交渉を行った。仲介者が私とプリゴジンがコミュニケーションを行うのを助けてくれた」。連絡すると、プリゴジンはすぐに電話口に出た。

「プリゴジンは高揚していた。完全に高揚していた。最初の30分は汚い言葉だけを吐いた。汚い言葉は普通の言葉の10倍はあった。“汚い言葉を使って悪かった”と彼はわびた。交渉を始めるため何を言おうか考えた。ワグネルは前線から戻ってきたばかりだった。何千人もの戦死者を見てきた。彼らは大きな不満を抱いている。特にロシア軍の指揮官たちにね」

 ルカシェンコは次のように理解した。ワグネルの戦闘員たちはプリゴジン自身に強烈な影響を与えている。プリゴジンはあたかも英雄のように振る舞っているが、戦闘員の死を見てきたワグネル突撃部隊の指揮官たちの圧力と影響下にある。プリゴジンはロストフを掌握した時、興奮し、異様な精神状態にあった。

 ルカシェンコはベラルーシのKGBや軍を通じて、プリゴジンとワグネルがロストフにあるロシア軍南部軍管区司令部を占拠したという情報を入手した。ロシアメディアはワグネルによる拘束や略奪を報じていたが、ルカシェンコが「無抵抗の民間人や軍人を殺したか」と確認すると、プリゴジンは「誓って言うが、誰も傷つけていない」と強調した。