4.ロシア地上軍はほぼ全軍をウクライナ投入

 ロシア軍は、甚大な損失を受け、それでもウクライナとの戦いに勝利するためには、ウクライナに全力を投入せざるを得ない状況なのだろう。

 ロシア軍が、ウクライナとの戦いで、ほぼ全戦力を投入している場合について、兵器の種類ごとに、保有数、95%を投入する数、損失数から損耗率と残存数を算出してみる。

 兵器の種類ごとの保有する全数はミリタリーバランスの数値、損失数はウクライナ軍参謀部の日日報告を参考にした。それぞれの数値は、以下の表のとおりである。

ウクライナに投入して残存している兵器数(2023年6月23日)

兵器の残存数に+の印は、保管していたものの中で、整備して、戦場に投入したと考えられる兵器である。その数については、情報がないので、数を明らかにはできないが、多くはないと考えられる(出典:ミリタリーバランス2021の数値を参考に、筆者が算定したものである)

5.反転攻勢3か月間の損耗度

 ロシア軍がウクライナに投入している戦力が、ウクライナ軍の反転攻勢でどれほど損耗するのかを分析する。

 今後は、両軍とも激しい戦闘を行うことが予想される。

 今後3か月で、ロシア地上軍兵器にどれほどの損失が出るのだろうか。

 参考になるのは、兵器についてはロシア軍が侵攻当初の3か月に損失した数値だ。

 戦車・歩兵戦闘車は約1300両、装甲人員輸送車は約3200両、火砲等は約600門、防空ミサイルは約90基の損失があった。戦況推移の予想から、これに近い数値であろう。

 すると、残存数は、戦車等が約4000両、装甲人員輸送車はほぼゼロ、火砲はほぼゼロとなる。

 装甲車や火砲が、ある時期にほぼゼロに近い状況になれば、ウクライナ軍の火力は、ロシア軍の戦車等に向けられるので、前述の予想よりもさらに損害は増える。

 2000~3000両か、あるいはこれ以下になるであろう。あるいは、保管していたものを改修して、戦場に復帰させたものの数に限定される。

 防空兵器は、損失が少なく多く残存している。

 だが、今後、ウクライナに「F-16」が供与されれば、その対レーダーミサイルの攻撃を受けて、損失が急速に増加する。

 そうなれば、ロシア軍戦闘域内やロシア国内の防空は不可能になる。