八勝館(はっしょうかん)

所在地:名古屋市昭和区広路町石坂29
完成時期:重要文化財の「御幸の間」は1950年。昼食を食べた「桜の間」は1958年。
設計:1950 年以降の主な新築・改修は堀口捨己

八勝館の「御幸の間」(写真:日建設計)

 八勝館は名古屋市内にある料亭。食通で知られる陶芸家の北大路魯山人(ろさんじん)も認めた味と空間。2020年には、建築家の堀口捨己(すてみ)が設計した「御幸(みゆき)の間」(1950年完成)など、敷地内の9つの施設が国の重要文化財となった。

 取材の前に、「桜の間」(1958年)で昼食をいただいた。以下は書籍からの抜粋。

 貴重な建物を見られるだけでも役得なのだが、「料亭は料理を食べてこその料亭でしょう」と筆者が強く主張したため、昼食を含めての取材になった。この企画、引き受けて良かった。

 昼食の場所は「桜の間」。ここは堀口の設計で1958年に完成した建物で、八勝館では堀口最後の作品。西澤さんの言葉を借りれば「堀口捨己の集大成」だ。ただ、そんなフレーズは途中で忘れるほど、料理がおいしい。旬の食材が小ぶりな器で次々と目の前に現れる。これが伝説の食通・北大路魯山人も好んだという味か……。

 食通として名を残す魯山人は、本業は陶芸家・書家で、自作の器を八勝館に納めていた。八勝館との交流は1930年代初めから魯山人が亡くなる1959年まで続き、頻繁に宿泊もしたという。

 食事の後半、庭に突き出した縁台で2人の料理人が鮎を炭で焼いてくれた。背景は一面の緑。気分は魯山人。映画を見ているようだ。

 イラストを自己解説すると、この絵は鮎の串焼きがうまく書けた。四角い陶器の器も焼き物感がいい感じだ。