3月7日は日本のマスコミの敗戦記念日になった
一方、BBCのドキュメンタリー後、日本のテレビ・新聞が動いたのは4月12日に元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏(26)が被害を明かす告発会見を外国特派員協会で行ってから。第一報はNHKで、翌13日午後4時のニュースで流した。
その後もNHKは性加害問題報道をリードした。5月17日には『クローズアップ現代』が「誰も助けてくれなかった 告白・ジャニーズと性加害問題」と題した特集を流した。被害を訴える元所属タレント6人を取材するという力の入った内容で、民放を圧倒した。
NHKもジャニーズ事務所との関係は深いのに、どうして性加害問題を怯まず報じられたのか。それは芸能界と深く関わる制作部門と報道部門の間に人事交流がほとんどないからだ。別会社のようなものだと考えていい。
「報道部門からドラマ部門へ異動」なんてことは決してない。昨年4月入局組までは制作部門と報道部門では採用枠も別々という徹底ぶりだった。その代わり、制作部門が報道部門に芸能界情報を提供することも一切ない。人事異動が活発で、制作出身の首脳が報道に指示を与えることもある民放とは全く異なる。
NHKが芸能界内の問題を積極的に報じるのは今に始まったことではない。2017年、清水富美加(28)が宗教団体「幸福の科学」系の芸能プロに移籍し、千眼美子として活動することになり、騒動になった際も『クローズアップ現代』は特集した。
この姿勢は古くから一緒。1973年、美空ひばりさん(1989年、52歳で死去)の近親者が反社会性力だとして問題化した時も批判の急先鋒だった。制作への気兼ねは見られなかった。
そんなNHKでもジャニー氏の性加害問題では同じ公共放送のBBCに後れを取った。BBCが性加害問題を世界に問うた3月7日は日本のマスコミの敗戦記念日なのかも知れない。もちろん筆者も戦犯の1人にほかならない。