SNSと同じ問題を抱えるメタバース
小鷹:メタバースが孕む危険性は、結局、今SNSで指摘されているものとほとんど同じなのではないかと考えています。
アカウントを作成して、現実とは異なる世界で自分とは全く違うキャラクターを演じる。その世界で起こることは、現実の自分の責任の範囲外です。そうなると、現実ではできないような発言をいとも簡単にSNSではしてしまう。現実にしっかりとした足場のない人に限って、そのような傾向にあると思います。
SNS上では、今そうしたことがごく普通に行われています。結果的に、それが社会の分断を招いているという問題があります。
SNS上では、すごく横暴に自由に振舞っている人たちがいますよね。そういう人たちが現実の世界に戻ってきたときに、SNSで得た優越感や万能感を現実世界に反映させてポジティブに活動できているか。否、ですよね。
むしろ、SNSでのカッコいい自分と現実の自分のギャップに苦しめられて、現実が悪化し荒廃していく。現実との関係性を見直さない限り、メタバースも同じようなことになっていくのではないかと考えています。
SNS空間にしろ、現在志向されているようなメタバース的なVR仮想空間にしろ、現実での自分を完全に透明にしてしまうことができます。現実の自分を消去して、なかったものにすることができる。
さらに、VR空間では、社会的な制約も、重力や身体能力といった物理的な制約も解除することができます。現実ではできないことを思う存分に楽しむことができる。
メタバースの謳い文句は「現実の自分をリセットして、全く違う自分になれる」「現実を忘れて、より自由度の高いメタバース空間を存分に楽しんでください」といった自己啓発的なものが支配的になっています。
そういう方向に向かっていく限りは、メタバースでも、現在のSNSで発生するような問題が必ず生じるでしょう。
──メタバースのオルタナティブ的な形態、及び「からだの錯覚」の延長として、幽体離脱について言及されていました。ここで言うところの幽体離脱とは、どのようなものなのでしょうか。