幽体離脱を可能にする基礎的能力
小鷹:例えば、自分が椅子に座っている様子を、第三者の視点で見ているかのように頭の中に思い浮かべることができると思います。このとき、自分を他者視点で眺めた様子を三次元的にシミュレーションし、自分の様子の画像なり動画なりを頭の中で構成しているのです。
自分が他者からどのように見られているのかということを日常的に想像する機会は多いと思います。自分が話す様子は相手に不快感を与えないか、自分の動作が周囲にどのような影響を及ぼすか。無意識的に行っている三次元シミュレーションは人間社会の基本でもあります。
実際に、幽体離脱経験の有無と、他者視点に関わる三次元空間のシミュレーション能力の高さとの関連性を示す研究が報告されています。実験結果は、幽体離脱経験者の多くが、高い他者視点取得のパフォーマンスを有していることを示唆するものでした。また、他者視点取得のときに活動する脳内領域が、幽体離脱を引き起こす場所と一致するという知見もあります。
他者視点を三次元空間でシミュレーションする能力は、その程度に差異こそあるものの、ほとんどの人が有している能力です。以上の観点から、僕は「ほとんどの人が幽体離脱のための予備的な能力を有している」と指摘できると考えています。
幽体離脱の基礎的な土台として、他者視点の取得能力と三次元空間のシミュレーション能力ということは、どうやら強くかかわってくるようです。そのほかにも、幽体離脱にかかわる特性が今後、明らかになってくると思っています。
──ある一定の条件さえ揃えば、ある程度錯覚に対して感度のある人は錯覚を起こすと書かれています。昨今、霊感商法などが話題になっていますが、条件を整えて錯覚を起こさせ、霊的な体験をしたかのように感じさせるということも可能だと感じました。錯覚がそのようなことに悪用される危険性はないのでしょうか。