物理的な幽体離脱と脳内現象としての幽体離脱
小鷹:ひとまず世間一般で流通している幽体離脱という概念には、物理的な幽体離脱と、脳内現象としての幽体離脱との2種類に分けることができるでしょう。21世紀の現在、科学的な研究の対象とされているのは、脳内現象としての幽体離脱です。
では、この2種類の幽体離脱にどのような違いがあるのか。まず、物理的な幽体離脱について説明します。
「幽体離脱」と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか。
身体から透明な自分がすうっと抜け出して、隣の部屋の出来事を見聞きする。透明な自分が身体に戻ってきたとき、透明な自分が見聞きしたことを記憶している。こんなことをイメージする人は多いのではないでしょうか。
上記が、いわゆる物理的な幽体離脱です。物理的な幽体離脱の有無については、20世紀後半には検証されつくされたと言っていいでしょう。現在では、物理的な幽体離脱の存在の可能性はほぼ否定されています。
では、脳内現象としての幽体離脱はどうでしょうか。
まず、脳内現象としての幽体離脱は、一種のシミュレーションであるということを理解しておいてください。
自分の視点が自分から離れて、自分を含むその時々の環境が視覚的にどのようになっているのかということを脳内で構成する。その結果、あたかも自分を第三者視点で見ているかのような感覚を得ることができる。これが、脳内現象としての幽体離脱です。
──書籍の中で「ほとんどの人が幽体離脱のための予備的な能力を有している」「私たちのほぼ全てが、幽体離脱の予備軍である」と書かれていました。これは、一体どのようなことなのでしょうか。
小鷹:まず「幽体離脱のための予備的な能力を持っていること」と「実際に幽体離脱ができること」との間には、非常に大きなギャップが存在します。このことはしっかりと留意する必要があります。
そのうえで、本の中で挙げている幽体離脱の予備的な能力は、私たちの日常生活でもよく使われている能力です。