宗教と政治の関係で橋爪氏が批判する公明党(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 安倍晋三元首相が凶弾に倒れてから再燃している旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)を巡る問題。だが、5月7日に韓国で開催された合同結婚式には、日本からもおよそ1000人が参加するなど、統一教会は事件前と変わらず活動している。

 統一教会の本質は何なのか。政治と宗教の関わりをどう整理して考えるべきか。『日本のカルトと自民党 政教分離を問い直す』(集英社新書)を上梓した社会学者の橋爪大三郎氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──日本を中心にカルトと政治の関係について書かれています。なぜ本書を書かれたのでしょうか。

橋爪大三郎氏(以下、橋爪):民主主義が機能するためには、選挙が正しく民意を反映する構造になっていなければならない。ところが、組織票があるとこれが揺らぐ可能性がある。

 すべての組織票が悪いとは思いません。経済的利害や政治的主張を反映する団体が政治をするのは正しい。しかし、宗教団体が組織票を持つのは民主主義に対してたいへんな害悪を及ぼす。このことに皆気づいていない。だから、書きました。

──「カルトはウイルスに似ている」と書かれています。

橋爪:宗教自体がウイルスに似ている。宗教というものは考え方です。人から人へと伝染していく。ウイルスに似ており何種類もある。このウイルスのうち、社会に害悪を及ぼすものを「カルト」と言います。

 ウイルスだから悪いわけではなくて、ウイルスの持つ突起が変異して害悪を及ぼすようになったものがカルトです。人々の社会生活を困難にする害悪です。

 しかし、変形した突起部分を見ているだけでは、それが病原性のウイルスかどうかは分からない。感染した後に人々にどういう反応を引き起こすか、そこが重要なのです。だから、一つの突起ではなくて、全体のシステムとしてどうなっているか、宗教はそのように見なければならない。

──統一教会の創設者である文鮮明の生い立ちや経歴などについて紹介し、「ひとことで言うなら、とっても怪しい人物」と書かれています。

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