国力に見合った現実的な目標を見極めよ

 もちろん、国家防衛戦略が防衛上の課題として挙げている「力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力」や「相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力」というのは重要な認識であり、防衛力の整備は進めなければならない。

 しかし、想定される危機がロシアや中国を相手にしたものであれば、1907年の帝国国防方針で対米、対露を相手にして不足のない軍備を定めたように、中露の軍事力に均衡し得る装備(軍備)ということになるのだろうか。

 それがどこまでの装備(軍備)を意味するかは精緻な検討が必要だが、国力に見合った現実的な目標となるかどうか見極めなければならない。「軍事的合理性の罠」に陥ることのない総合的な安全保障の観点から、国防(国家防衛戦略)を確立しなければならないのだ。