観光地は「どこに行っても同じ」状態に

 このように旅行者数が回復している一方で、大きな課題となっているのが「コピー観光地」です。

 観光地の入り口に設置されている赤提灯、石造りの町角に設置されている小運河、観光客向けのジャズバー、街角で売られている飲食品など、さまざまなものが画一化しているのです。

 近年冷え込んでいた観光需要を活性化させるためでしょうか、中国各地で観光客を集客するための観光地整備が進められました。ところがその結果、どこも同じような“コピー”ができあがってしまったのです。

 地方ごとの特色を持ち、特産品があり、伝統建築が残されていた観光地でも、同じようなことが起こっています。筆者は、亜熱帯の雲南省、グルメで知られる広東省、水郷として名高い江蘇省など多くの観光地を訪れましたが、近年急速に画一化が進んでいることを強く感じます。

 それを指摘する「観光名所の99%は同じ作りのコピーである」という記事も出ています(“各地古镇相似度99%”:千篇一律的“诗和远方”索然寡味)。

いまやどの観光地に行っても同じようなものを見ることになる

 集客に失敗しないための方策なのかもしれませんが、「どこの観光地も同じ」「同じような体験しかできない」という声もよく聞かれるようになりました。

 筆者の周囲では、コロナによる移動制限や家族との死別を経て人生の価値観が変わり、新しいものに触れる喜びを再認識した人も多くいます。「旅行を通じて新しい発見をしたい」という欲求は、中国ではますます強くなっているように感じます。

 せっかく回復してきた人々の旅行意欲に水を差さないよう、それぞれの観光地が創意工夫を重ねていってほしいと思います。