香港のヴィクトリアハーバーから香港島を望む夜景(筆者撮影)

(加藤勇樹:中国広東省在住コンサルタント)

 2023年1月、香港と中国本土の間での移動制限がほぼなくなったのにあわせ、筆者は香港を訪問しました。2020年からの3年間に行われた移動制限は、香港にどんな影響を与えたのか、現地で見聞きした“今の香港”を前後編に分けてお伝えします。

20年ぶりの大幅マイナス成長に

 2020年からの3年間、香港の経済はかつてない大打撃を受けました。香港政府は2022年度の香港GDP(国内総生産)が前年比3.2%マイナス成長と予測しています(「多重利空打擊 香港官員預估:2022年GDP衰退逾3%」、https://wantrich.chinatimes.com/news/20221218900308-420201)。コロナウイルスによる混乱が始まった2020年は-6.5%の減少、2021年には6.3%の増加に戻ったものの、2022年には再度マイナス成長に陥ってしまいました。

香港GDPの前年比の変化(Hong Kong GDP Growth Rate 1962-2023より筆者作成)

 このような香港経済への大打撃は、1998年のアジア経済危機以来です。その後の20年間で香港の平均給与は2倍近く上昇し、香港市民も経済成長を実感できたことを考えると、誇張抜きの大不況といえます。

 中国本土ほどではありませんが、香港市内でもコロナ対策による飲食店での会食制限や各種イベントの中止といった対策が採られました。2022年の4月に香港全体が一時的にロックダウンとなったのは大きな衝撃だったと言えるでしょう。

 筆者も2020年12月まで香港に居住し、勤務していました。今回、香港を訪ねるにあたり、ある程度の変化は予想していましたが、実際の変貌は予想を大きく上回りました。かつての人気店舗が空きテナントになっていたり、単独のオフィスからレンタルオフィスに移る会社が続出していたり、ビジネス全体の大きな変化を感じました。

かつて観光客でごった返していた九龍半島の広東道では、小売店が閉店し、空いたままになっているテナントビルがあちこちにあった(筆者撮影)