この10月に香港政府が興味深い都市開発計画を発表した。「北部都市圏発展計画」(北部計画)は、制限によって開発が進んでいなかった香港の北部と、それに隣接する中国本土の深圳とを一体として都市開発を行うというものだ。この開発計画の概要と狙いを、中国在住の加藤勇樹氏がレポートする。(JBpress)
(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)
香港北部と深圳を一体とした都市開発
2021年10月6日、香港特別行政区の林鄭月娥行政長官は2021年度の施政報告の中で、合計300平方キロの都市圏建設計画である「北部都會區發展策略」(北部都市圏発展計画、以下北部計画)を明らかにしました(https://www.policyaddress.gov.hk/2021/chi/pdf/publications/Northern/Northern-Metropolis-Development-Strategy-Report.pdf)。この都市圏にはおよそ90万世帯、200万~250万人が居住できる住宅を開発予定で、これは香港の人口(約750万人)の3割近くに相当します。
一見、香港単独の都市開発に見えますが、注目点は「双城三圈」(Twin Cities, Three Circles、2都市と3つの環)という言葉です。この2都市とは香港と深圳のこと、3つの環とは開発対象である3つの地区を表しています。つまり北部計画は、香港(次の図の下側)と深圳(同上側)の境界(同上下中央付近)をまたがって両方の地域を一体として開発するものなのです。
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香港の北部一帯は、湿地帯などの自然保護区があるほか、中国本土(深圳)との境界線付近であることから、これまで政府が開発を制限していた地域でした。一方深圳側は、高層ビルが建ち並ぶ市街地が境界線の間近まで迫っています。
次の写真をご覧いただけば、両側での違いが明確にわかります。