ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など、巨大砂漠が大きな脅威となっている中国西部。砂漠の緑化事業などが実を結び、拡大傾向にあった砂漠地域の面積は、近年縮小傾向に反転した。筆者が実際に砂漠の都市敦煌を訪問し、現地で行われている砂漠緑化などの取り組みをレポートする。(JBpress)
(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)
中国西域にある都市、敦煌(とんこう)は、井上靖の小説や日中合作映画の舞台としてご存じの日本人は多いのではないでしょうか。実際、20年ほど前は日本からの旅行客が敦煌市の主要な外国人観光客でした。
砂漠に囲まれた敦煌は、これまでずっと拡大する砂漠の脅威にさらされてきました。敦煌だけではなく、砂漠地帯で巻き上げられた砂が降り注ぐ「黄砂」は中国全土、さらには日本など他の国にとってもやっかいな被害をもたらしています。
このような砂漠化の脅威にさらされていた敦煌をはじめとする中国西部ですが、近年緑が戻りつつあります。地道に進められてきた砂漠緑化が実を結び始めたためです。
今回は筆者が実際に敦煌を訪問し、現地で見た砂漠緑化事業の現状をお伝えします。
国土の4分の1を占める砂の海
中国西部には大きな砂漠が広がっています。中国とモンゴル国にまたがるゴビ砂漠(約130万平方キロメートル)や、さらに西方、ヒマラヤ山脈の北にあるタクラマカン砂漠(約33万平方キロメートル)があります(次の地図参照)。日本の国土面積の約38万平方キロメートルと比べると、いかに広いかがおわかりいただけるでしょう。
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2004年に「国家林业局」という中国の環境庁下部組織が発表した「中国荒漠化和沙化状况公报」(中国における砂漠化とその影響、http://lyj.gd.gov.cn/news/dynamic/content/post_2184456.html)によると、中国における砂漠もしくは砂漠化が進みつつある地域の面積は263万平方キロメートルでした。中国の国土面積の約27%という大きな比率を占めることが明らかになりました。