より広範囲の大計画「大湾区」
北部計画は香港と深圳という限られた地域のものですが、さらに大きな計画が国家プロジェクトとして進んでいます。それが「粵港澳大灣區」(大湾区、The Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area、GBA)です。
「イノベーション産業が盛んな広東省の土台に、香港の開かれたビジネス環境や人材を移植し、かつマカオのレジャー産業を魅力を一層引き出す」という地域全体を統合する計画は、中国本土、香港政府、澳門(マカオ)政府によって、2017年から始まりました。

大湾区の対象地域には、日本の国土面積の約7分の1にあたる約5万5000平方キロに7000万人が居住しています。一人当たりのGDPは中国全体の平均よりも20倍以上あり、産業の集約化の著しい地域なのです(大湾区建設開発委員会の公式ホームページより、https://www.bayarea.gov.hk/tc/home/)。
北部計画は大湾区内における一つの取り組みであり、同様の取り組みはそのほかにも多数行われています。マカオと隣接する中国側の珠海市には、マカオと関係が深いポルトガル語圏企業の進出誘致のため、1島2制度ともいえる人工島の「横琴経済区」(http://www.hengqin.gov.cn/)が作られています。
「広州市南沙区」(http://www.gzns.gov.cn/)は、香港でもっともイノベーションに力を入れている香港科技大学が関係企業を率いて進出を進めています。
都市の建設や高速鉄道の拡充といったハード面での取り組みだけでなく、ソフト面つまり社会システムに関する取り組みも進んでいます。例えば、香港・マカオと広東省での税制度の一体化や、大湾区内での医療保険制度の統一などが行われています。また、大湾区全体を対象にした合同就職説明会も開催されています。

次回は、大湾区の中国側で活躍する香港人へのインタビューを交え、大きく変化している大湾区の現状をお伝えします。