春節の伝統的な赤提灯と、観光買い物客でにぎわう香港利東街(筆者撮影)

(加藤勇樹:中国広東省在住コンサルタント)

 2023年1月、筆者は中国本土との移動制限がほぼなくなった香港を訪問しました。

 旧正月である春節期間中(1月21日から26日)は、54万人が香港に入境しました(「春节期间香港旅游市场明显回暖」、http://ent.people.com.cn/n1/2023/0130/c1012-32613840.html)。とはいうものの、そのうちの84%が香港市民であり、広東省深圳市の羅湖チェックポイントなど主要な交通機関がまだ制限されていることから、まだコロナ前の移動人数には遠く及ばない状況です。

 前編では香港がコロナ禍で受けた打撃をお伝えしましたが、今回は、それから立ち上がろうとする香港の新たな取り組みについてご紹介します。

前編
3年間、中国本土との移動が制限された香港が受けた打撃
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73874

実は自然豊かな香港

 香港は、「超過密な都市」という印象が強いと思いますが、面積の7割近くが自然公園や未開発地域として保全されていて、週末のトレッキングやハイキングが香港には根付いています。そんな自然の豊かさを香港の魅力を発信しようという試みが、香港での新しい名産づくりとともに進められています。

 香港の郊外、「新界地区(New Territory)」でコーヒー農園とエコツーリズム事業を立ち上げている、金啓文さんにお話をうかがいました。

住宅地が点在する丘陵地帯で、金啓文さんたちが切り開いたコーヒー農園(筆者撮影)

「私は日本、香港、中国本土で仕事や生活をしてきましたが、香港に強い思い入れがあります。この数年間抱いていた香港の魅力を発信したいという思いから、“Made in Hong Kong”を掲げたコーヒーの栽培を始めました」

「この新界地区は隣接する広東省深圳との関係性から、開発の手が加わってはおらず、豊かな自然が残されています。多くの香港人はここで農業が営まれていることを知らないでしょう。中国本土や日本からも多くの食品が流通する香港では、地産地消や地元食品というものに対する注目度もあまり高くありません」