香港と隣接する広東省深圳との間では現在多数の人々が日々行き来しているほか、歴史的な結びつきも強い。そのような関係の中で、「香港ブランド」を活用しながら中国本土側に進出している香港の人材の現状を、中国在住の加藤勇樹氏がレポートする。(JBpress)
(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)
香港と中国本土の深圳とは川を挟んで隣接しており、さらに地域発展計画である「粵港澳大灣區」(大湾区、The Guangdong-Hong Kong-Macao Greater Bay Area、GBA)としての一体的な都市開発や行政運用が進んでいます。
前回は香港と深圳にまたがる「北部都市圏発展計画」(北部計画)という都市計画についてお伝えしました。
香港と中国本土を一体化した新都市開発が明らかに
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67471
今回は、「香港ブランド」を活用しながら中国本土側に進出している香港の人材の現状をお伝えします。大湾区は「香港都市圏」が広がったものとも言えるのです。
中国本土と行き来し続けてきた香港人
香港とマカオは1国2制度の適用として、独自の行政制度が敷かれていますが、数百メートルのイミグレーション(出入境管理施設)を越えて、多くの人々が行き来しています。この多さは日本で知られている以上のものと言えるでしょう。
2019年の香港出入境管理局の統計によると、約750万人の香港人口中で、約55万人の香港籍市民が中国本土に居住しているとされています。そのうちの約45万人は隣接する広東省の大湾区地域に居住しています。
前編でご紹介した通り、香港の不動産価格は世界でもトップクラスです。世帯月収が40万円以上ある家庭でも、20平方メートル以下の住居しか借りられない、という厳しい環境といえます。そのため、よりよい生活環境のために隣接する深圳市で不動産を購入し、毎日香港へ通勤する人々がいるのです。
毎日中国本土から香港に通学する学童・生徒(小学生から高校生まで)だけも3万人以上います。香港の優れた教育システムを求めて越境通学しているのです。