「激安突貫旅行」が若者のブームに

 ところが観光収入というと、昨年比では30%の増加ですが、2019年比では1%未満しか増加していないのです。旅行に出かける人が増えたものの、1人当たりの消費額が大きく低下したということです。

 その理由は「節約旅行」の広まりです。

 メーデー休暇前に行われた旅行の意向調査では、1人当たりの旅行予算が1000~2000元(約2万~4万円)という割合が最も多く、1000元未満も8.8%ありました。一方予算が3000元以上という人は7.5%と少なくなっています(2023中国五一假期旅游消费行为大数据调查)。

 特に20代から30代前半の人たちに広まっているのが、「激安突貫旅行」(これは筆者の造語で、中国語では特种兵式旅游:特殊部隊式旅行)です。ホテルなどの宿泊施設に泊まらずに、深夜営業している飲食店で睡眠をとったり(次の写真を参照)、夜行バスで移動したりします。日中に多くの観光地を巡ることを目指し、できる限り安く移動を重ねるという旅行スタイルです。

ほぼ24時間営業の火鍋店「海底捞」にて夜を明かす旅行者たち(中国SNSより)

 SNSには「2日間の旅行で1300kmを移動し、6つの都市を巡った」という投稿も上がっています。調査によると、30歳以下で激安突貫旅行を経験したことがあるのは4割、さらに3割は今後このような旅行方法を選択したいとしています。このトレンドは今後ますます広がっていくと思われます。

 このような動きのある国内旅行に対して、国外旅行はどういう状況でしょうか。

 最大の課題が、国際便の絶対的な不足です。中国民航局によると、中国と世界を結ぶ航空便はコロナ前のおおよそ3割程度の本数にとどまっています。また国際航空便が復活し、旅行が可能になった国の数も、まだ8割程度です(民航局举行4月例行新闻发布会,一季度我国民航经济运行整体态势不断向好)。

 航空券の価格もコロナ前に戻っていません。コロナ感染が拡大していた時期には東京-上海往復が2万元ということもありましたが、現在は4000元程度に落ち着いてきています。それでもコロナ前に比べた割高感はぬぐえません。

 中国の観光客が国外に行くようになるには、まだ時間がかかりそうです。