川本氏ら組合員8人に残された道は、法廷闘争しかなかった。解雇された直後の2017年4月、奈良学園を相手取り、地位の確認などを求めて奈良地方裁判所に提訴した。
大学や学部新設で2度にわたる虚偽申請
奈良学園から文科省への申請をめぐる不手際は、現代社会学部の改編申請が初めてではなかった。
2006年には奈良文化女子短期大学を改組して「関西科学大学」を設立する申請をしたが、申請書類に虚偽の記載があったことが文科省から指摘され、文科省は大学設置申請を却下した。すでに亡くなっていた初代理事長を、理事会の構成員として申請していたのだ。虚偽記載による設置申請の却下は、日本で初めてのことだった。
申請を却下されたが、そのときにはすでに200人以上に入学の内定を出していたことが大きな問題となった。結局、1人あたり30万円の補償金を支払ったほか、文科省からは新たな学部の申請を3年間禁じられる処分を受けた。この理事会の虚偽申請によって学校法人奈良学園は莫大な損失を被った。
さらに2007年にも、ビジネス学部への改組を申請した際、書類に虚偽記載があったほか、虚偽の教員名簿を出していたことが判明した。
過去にこれだけ問題を起こしていながら、奈良学園理事会や大学の幹部が責任を取ってこなかったことが、2013年の現代社会学部申請の失敗につながっていると川本氏は指摘する。
「自分たちは失敗の責任を取らずに、教員にリストラを押し付けたのが今回の問題の構図です。こんなことが許されたら、大学の経営陣が赤字になった学部の教員を一方的に解雇することが可能になってしまいます。大学教員の労働者としての権利が蹂躙されているのは明らかです」