川本氏はこの説明会で言い放たれた言葉を「今でも覚えている」と憤る。

「法人側は私たちに、警備員なら雇用継続が可能だと言いました。この発言には耳を疑いました。再編が成立しない場合は既存の学部を残す決定があったにもかかわらず、リストラをするのは道義的にも許されることではありません。警備員なら雇うという発言も含めて、とても教育機関とは思えません」

 奈良学園は学部再編に失敗したとはいえ、経営難だったわけではない。幼稚園から大学まで10の学校を運営し、約200億円の流動資産を保有しているほか、この年までの10年間で300億円以上の設備投資もしていた。経営難を理由としないばかりか、経営陣自らの失敗を責任転嫁した大量リストラは異常だろう。

 このリストラを止めようと、川本氏らは教職員組合を結成して、奈良県労働委員会にあっせんを申請した。労働委員会は2016年7月、「互いの主張を真摯に受け止め、早期に問題解決が図られるように努力する」ことと、「労使双方は組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について、誠実に協議する」ことなどを求めるあっせん案を示した。

 労使双方はこのあっせんに合意した。あっせんに沿って団体交渉を進めるはずだったが、奈良学園は翌月にはこの合意に反して、「事務職員への配置転換の募集のお知らせ」を一方的に配布する。事務職員になるなら引き続き雇用するという主旨だった。

 さらに11月には、組合員については退職勧奨をすることを理事会で決定してしまった。労働委員会にあっせんを申し立てたことに対する、報復とも言える行為だ。

 組合は奈良県労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てたが、奈良学園は2017年2月に解雇予告通知書を出して、3月末に解雇を強行してしまった。