また、度重なる問題を起こしても、幹部が責任を取らずにその職を続けることができるのは、学校法人の仕組みに欠陥があるのではないかと川本氏は考えている。

「経営者には経営の自由があると思います。その一方で、問題が起きたときには、株式会社であれば株主総会で経営陣の責任が追及されます。しかし、学校法人の理事会は、問題を起こしても責任を取る仕組みがありません。学校法人が公的資金を得て、税制上も優遇されているのは、営利企業とは設立の趣旨がまったく異なるからで、社会的な役割から高い倫理観が要求されるはずです。それなのに、責任を取ることがない経営の自由が認められることに疑問を感じます」

 理事会に不当とも言える理由で一方的に解雇されても、教職員の側は裁判闘争をするしかないのが現実なのだ。「私たちが泣き寝入りすれば悪しき前例になり、日本の私立大学全体に影響してしまいます。大学教育を守るためにも、最後まで諦めずに闘います」

一審で解雇無効と1億円超の支払い命じる

 川本氏ら教員が訴えた裁判は、提訴から3年後の2020年7月に一審の奈良地裁で判決を迎えた。原告は元専任教員6人と、再雇用の元教員2人を合わせた8人だったが、元専任教員の1人は他大学に職を得て訴訟を取り下げていた。

 判決では、再雇用の元教員2人の訴えは却下したものの、奈良学園に対し5人の元専任教員の解雇無効と、未払いの賃金など合計1億2000万円以上の支払いを命じた。

 3年にわたる審理では、奈良学園による解雇が人員削減の必要性や解雇回避の努力、人選の合理性、手続の相当性など、労働契約法16条で定める整理解雇の4要素を満たしているのかどうかが検討された。

 その結果、5人の元専任教員の解雇は、客観的に合理的な理由がなく、通念上相当ではないと結論づけた。さらに、大学教員は高度の専門性を有する者であるから、教育基本法9条2項の規定に照らしても、基本的に大学教員としての地位の保障を受けることができると判断した。

 つまり、無期労働契約を締結した大学教員を、一方的に解雇できないことを示したのだ。川本氏らは判決を次のように評価した。