ウクライナに供与された独戦車「レオパルト2」(写真:AP/アフロ)

 4月30日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「重要な戦闘が間もなく始まる」と宣言、同国軍の一大反転攻勢が「秒読み」だとほのめかした。

 ウクライナの反転攻勢については年初から「雪解け後の4月以降では?」と全世界のメディアや専門家が予測していた。その見立て通り、西側最強のMBT(主力戦車)“三羽烏”である「チャレンジャー2」(英)、「レオパルト2(レオ2)」(独)、「M1」(米)の供与も解禁された。また、これらを備えた“専門軍団”の創設と猛特訓も4月いっぱいに完了するなど、反転攻勢のお膳立ては揃ったといえる。

 欧州での戦車戦としては第2次大戦以来のスケールとなることは確実だが、想定される突撃ルートや戦い方について推理してみたい。

120mm砲を装備する英国戦車「チャレンジャー2」(写真:米陸軍)

流出機密文書に書かれた兵力は嘘かまことか?

 反転攻勢が現実味を帯び出した4月初め、水を差すようにNATO(北大西洋条約機構)の機密文書の流出が発覚した。絶妙のタイミングだったことから「見切り発車で作戦を強行しそうなゼレンスキー氏の“勇み足”を阻止するため、アメリカがあえて仕掛けた一大情報作戦ではないか」との指摘も出た。

 流出文書は新しく編成された専門軍団にも言及、この情報自体がそもそも怪しいとの声も強いが、とりあえずこの情報を叩き台に推察すると──。

 軍団は「機械化旅団」12個で、うち9個は欧米など国外で鍛え上げられ、4月までに完了の予定(機密文書は3月現在)。「機械化」とは戦車や装甲車を多数配備し、攻撃力(火力)とスピード(機動力)に優れているという意味だ。

 規模は約5000名、世界で最も実戦経験豊富な米陸軍のフォーメーションが手本になっていることは想像に難くない。

 米陸軍の編成だが、現在の戦車部隊の主軸は、「機甲旅団戦闘団」(Armored Brigade Combat Team:ABCT。兵員5000名弱)で、戦車や歩兵、砲兵、工兵、防空、補給など多種多様な部隊からなり文字どおりの「戦闘団」だ。

「諸兵科連合部隊」とも呼ばれ、ある程度の規模の作戦を単独(自己完結)で続けられる。最低限必要な部隊を“全部乗せ”した戦闘集団で、MBTが約90台と比較的多いのが特徴だ。「師団」(兵力は1万~1万5000名程度)の規模をほぼ3分の1に圧縮した、小回りの利く“ミニ師団”と考えていい。

 一方、国外で訓練を受けた9個の機械化旅団の中身は、戦力に多少の差はあるが、各旅団は戦車30台前後、装甲車60~100台。全体で約4.5万名、戦車250台以上、装甲車・自走砲1000台弱の規模となるだろう。

 ABCTと比べ戦車数が3分の1と少ないが、実はNATOの欧州主要国、英仏独の陸軍と同等かそれ以上の戦力だ。中でも「第33旅団」と呼ばれる部隊が最強らしく、話題のMBT、レオ2を50台弱も揃える。

 加えて突撃前に対峙する敵を砲撃で叩きのめす(俗に「耕す」とも言う)ために使う、米製のM109自走砲を24台も備える。キャタピラ(装軌)式で戦車と随伴して悪路も踏破できるのが特徴で、他の旅団の大部分が牽引式の大砲で砲撃までの準備に時間がかかり、悪路に弱いのとは明らかに違う。