そんなアスレチックスと藤浪獲得を巡る経緯について、昨季までチームに在籍していた元同球団関係者は次のように明かす。

「実を言えば藤浪はそもそもフォーストGMの“肝いり”で獲得に動いた投手。対照的にビーン氏はGM時代、2012年オフに埼玉西武ライオンズからFAになった中島宏之内野手を高額の複数年契約で獲得しながら2年間で一度もメジャー昇格を果たせないまま終わってしまい、2013年2月にマイナー契約した前福岡ソフトバンクホークス所属の岡島秀樹投手もメジャー昇格は5試合のみの登板で結果を残せなかったことで、それ以降、日本人選手獲りにはかなり懐疑的な姿勢を抱くようになっていた。

 だが藤浪の代理人で米球界では“剛腕”としても名高いスコット・ボラス氏にも押し切られる形でフォーストGMはビーン氏の異論に耳を傾けることなく、藤浪サイドとチーム内で5番目の高額契約を締結した。就任早々だった自身のGMとしての威厳を球団内に反映させておく意味においても、フォーストGMはビーン氏に忠告されたからといって藤浪獲得の考えを簡単に曲げたくなかったのだろうと推察される。

 ただ、阪神に支払うポスティングの譲渡金を含めれば藤浪獲得に費やされた球団の負担額は年俸以上。シビアな球団運営がモットーのアスレチックスの中で、フォーストGMとビーン氏のパワーバランスや背景と照らし合わせれば“藤浪が使い物にならない”と判断されてしまうまで残されている時間はかなり少ない」

速球、スプリットは十分通用するが、なにせ制球が

 エンゼルス・大谷と同年代で高校時代、ともに名を連ねてチームメートとなったU-18日本代表を経てプロ入り当初までは「未完の大器」として肩を並べる存在同士だった。今やすっかり差をつけられてしまったが、多くの人から「?」を付けられたメジャー挑戦でアスレチックスから手を差し伸べられ「再生」のチャンスをつかみ、大谷と同じ檜舞台に立つことはできた。

今年2月、オープン戦で久しぶりに顔を合わせ笑顔で握手する大谷翔平と藤浪晋太郎(写真:AP/アフロ)