捜索中止で助けられなかった原発周辺に取り残された命

 校舎の周りの請戸地区に1535人が住んでいたが、津波で壊滅的な被害を受け、取り残された人がいた。津波だけならその人たちを助けに行けた。ところが原発が妨害した。

 浪江町消防団の救助活動の実話を元に描いた「無念」というアニメ*4がある。大地震翌日、3月12日早朝のこんな場面が出てくる。

馬場有・浪江町長「東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、3月12日午前5時44分、避難指示が10キロ圏内に拡大され、請戸地区から避難せざるをえません」

消防団員「そんな、あそこには救助を待つ人がたくさんいるんです。見殺しにはできません」

馬場町長「残念ながら避難区域になった場所に行けとは、2次災害になりますので言えません。苦渋の選択です」

消防団員「やっぱり原発は危ないんですか」

 救助が再開されたのは4月になってからだった。請戸地区では154人が亡くなったが、もし原発事故が救助を中断させていなければ、この数は減っていたことだろう。

*4 一般社団法人まち物語制作委員会 https://matimonogatari.iinaa.net/

震災から3年後の2014年3月11日、浪江町の請戸漁港で開かれた慰霊祭。町役場の人々、警察官、消防士、消防団員などが犠牲者に黙とうを捧げた(写真:アフロ)