誤解されたまま運用されてきた文民統制

 こうした目を覆うばかりの状況を大きく変えたのが安倍氏だったと言える。統合幕僚長との頻繁な面会やNSSへの制服組登用だけではない。2022年8月29日付の『産経新聞』によると、安倍氏は2013年3月に防衛大学校卒業式のスケジュールが自民党大会と重なったことを知ると「この時期に防大卒業式があるのは当然なのに自民党も野党ボケしたな。防大卒業式は国家行事なんだ」と自民党大会のスケジュールを変更させたという。

 こうした一連の変化は、日本の政治と自衛隊の関係において、革命的ともいえるほどの変化だった。

 日本が民主主義国家である以上、自衛隊はシビリアンコントロール、日本語でいえば「文民統制」の下に置かれる。文民統制とは何か。その定義は人によって異なるが、国際政治学者、サミュエル・ハンチントンの『軍人と国家』では、こう定義している。

「政治上の責任と軍事上の責任を明確に区別することであり、また後者の前者に対する制度的な従属である」

 こうやって引用すると、何やら難しい話になって申し訳ないが、要するに「軍人は、国民の代表たる政治家の言うことを聞かなければならない」という話だ。