この「文官統制」を成り立たせた仕組みが2つある。防衛参事官制度と防衛省設置法第12条だ。
防衛参事官は、設置法第7条第2項で「防衛省の所掌事務に関する基本的方針の策定について防衛大臣を補佐する」と定められていた。つまり、文民統制を行う主役は防衛庁長官だが、実質的に取り仕切るのは長官を補佐する防衛参事官というわけだ。しかも、防衛庁の官房長と各局長は防衛参事官が充てられることになった。防衛参事官とは背広組の官僚のことを意味していたのだ。
今でこそ、少し事情が変わったが、防衛庁長官は長らく軽いポストとして扱われた。蔵相(財務相)や外相のように「首相の登竜門」として扱われることもなく、頻繁に行われる内閣改造のあおりを受けて、長官の在任期間も短くなっていく。一部の例外を除き、長らく国防問題に取り組んできた「国防族」議員が防衛庁長官に就任することもまれだった。
そうなると、長官は「素人」として防衛庁トップに君臨することになる。このような事情で、防衛庁長官を直接補佐する背広組の官僚の発言力はどんどん増していく。
さらに、防衛省設置法第12条は、内局の官房長や局長が防衛庁長官を「補佐」するとした上で、長官は陸海空自衛隊と統幕に指示・監督を行うと規定していた。つまり、長官に代わって文民統制を担うのは、背広組の官僚だということになる。