軍がどれだけ高性能な兵器、装備を備えていても戦いに勝てるとは限らない。元海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)の香田洋二氏は、著書『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』の中で、「軍が機能するかどうかは、国の政治のあり方、そして政治と軍の関係に大きく左右される」と指摘する。真の防衛力強化のために日本人が直視すべき、日本の防衛の構造的欠陥とは?
(*)本稿は『防衛省に告ぐ 元自衛隊現場トップが明かす防衛行政の失態』(香田 洋二著、中公新書クラレ)から一部を抜粋・再編集したものです。
驚天動地の「改めて法律を調べてみたら」発言
安倍晋三氏が首相に就任するまで、橋本龍太郎氏のように自衛隊を重視する首相はなかなか現れなかった。それどころか、自衛隊に対する根本的な理解が欠けた首相もいた。
「改めて法律を調べてみたら『総理大臣は、自衛隊の最高の指揮監督権を有する』と規定されており、そういう自覚を持って、皆さん方のご意見を拝聴し、役目を担っていきたい」
2010年8月19日、当時の菅直人首相は、自衛隊の折木良一統合幕僚長ら制服組首脳との首相官邸で行われた意見交換会でこう言い放った。