ですから、今日この会場に来られた方は、マスコミの報道を見たとき、まずは本当にこれが真実なのかどうかを、疑ってください。
冤罪被害者はみんな、本当に苦しんでいます。ぜひ自分のことのように怒りを持って、支援してほしいと思います。
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県警をピリつかせる映画
仙波さんのお話、いかがでしたでしょうか。Winny事件の金子さんが最高裁で無罪を勝ち取ったのは、仙波さんのこのスピーチの翌年、2011年のことでした。
天才プログラマーとしての活躍の機会を、冤罪によって7年もの間奪われた金子さん、そして、裏金問題を告発し正義を貫きながらも、さまざまな組織的圧力に苦しんだ仙波さん。この二人の闘いは、まさに同時期に進行し、皮肉にも「Winny」というソフトによって思わぬかたちでつながることになるのです。
『Winny』の封切り前日、仙波さんは映画のチラシを持参し、愛媛県警の記者クラブを訪れたそうです。
仙波さんはそのときのことを、苦笑いしながらこう振り返ります。
「記者クラブ室でチラシを記者に手渡していると、広報県民課広報管理室の田口知彦警視が血相変えて飛んできましてね、『仙波さん、すぐに部屋から出てください』と言うんですよ。まあ、彼も警察官になりたての20代の頃から私のことはよく知っていて、『仙波さんの役は吉岡秀隆さんがされるそうですね……』なんて言ってました。この映画のことは、警察内部でも知れ渡っているようですね。後で確認したら、記者クラブでは私が持参した17枚のチラシをちゃんと各社に配布してくれたようで安心しましたが、残念ながら松山市内ではこの映画の上映はないようです」
映画『Winny』は、今の日本で起こっている現実を脚色なく活写した作品です。「真実」の追及に手を抜かず闘い続けた男たちの生きざま……。エンディングには、思わず熱いものがこみ上げました。
一人でも多くの方に見ていただきたい、そう思っています。