そもそもパスワードは4つも必要か?

 署名用電子証明書(①)は、電子署名(秘密鍵による暗号化)をするために使われ、基本4情報(※)が記載されている。例えば、電子署名をして確定申告書を送信した場合、本人が作成したものであること、途中で改ざんされていないことを証明するとともに、否認を防ぐこともできる。

※氏名、住所、性別、生年月日を基本4情報という

 利用者証明用電子証明書(②)は、機能的には①と同じだが、証明書に基本4情報が記載されていない。つまり、②単体では誰のものか不明であり、通常①とセットで使われることになる。

 ただし、発行者は誰のものか知っているため、証明書内のシリアル番号を使えばこの電子証明書が誰のものであるかを特定できる。だから利用者証明用電子証明書を使ってマイナポータルにログインすることが可能となる。

 ここでのオンライン本人確認は、電子証明書による身元確認とパスワード入力による当人認証で確立されるからだ(※)。

※マイナンバー制度における本人確認(身元確認と番号確認)とは別のもの

 個人番号や基本4情報のテキストデータ(③)は入力補助、つまりデータを自動入力するために使われる。

 住民票コードのテキストデータ(④)は、住基ネット関係事務の際に住民票コードをテキストデータとして利用する時に使われる。
 
 しかし、ここでなぜ4つものパスワードが必要なのかという疑問が出てくる。券面に記載されている個人番号や基本4情報のテキストデータを使うために、なぜパスワードが必要になるのか。

 恐らく他人のマイナンバーカードにICカードリーダを近づけ、こっそりとマイナンバーと基本4情報を盗み取る輩がいることを想定したのではないだろうか。仮にそうならば生年月日でもよいはずで、わざわざパスワードを設定する必要はない。

 また、住民票コードのテキストデータ(④)を使うと言っているが、このデータ自体が不要である。

 住基カードでこの領域が設定されたが、20年間カードを保有している筆者もこれまで使ったことがなく、これからも使う見込みはない。使えるのは行政機関だけであり、住民票コードが必要ならば住民基本台帳を見ればよいだけだ。

 何も考えず住基カードをそのまま引き継いだために残っている領域であり、パスワードはおろかこの領域自体も不要で廃止すべきである。