筆者の同僚が操縦する便が、成田空港から離陸するために、運用時刻ギリギリに誘導路を急いで滑走路端に向けて走行していたところ、管制官から「あと2分で運用時刻を越えるので状況から離陸はできません、ゲートに戻って下さい」などと言われた事例も数多く見ている。

 著者自身は香港の旧啓徳空港へのフライトが多かったので、出発地の日本で何かトラブルが発生すると気が気ではなかった。夜の門限に間に合わないと代替空港である台北へダイバートすることになり、乗客と機材のハンドリングが大変なことになり、実際に会社としては何度も経験している。

 著者も一度、夕方に成田空港で操縦系統のトラブルを発見し、ゲートに戻って、代替機材で香港へ向かったことがある。門限に間に合うような飛行ルートと速度が最も速く得られる高度をとり、通常なら離陸後に右施回するところを左施回して西へ向かうなど、管制官の協力もあって結果的に門限までに着陸できたが、着陸までヒヤヒヤドキドキの連続であった。

キャンセルや後続便への振り替えもあり得たが

 では、問題になったフライトの場合、どうしたら良かったのか?

 福岡空港側から事前に、遅延がJALの事情であり特例扱いしないと言われていたことや福岡空港上空の混雑を予測すると、フライトをキャンセルするか乗客を後続便に振り替えるなどの方法も考えられた。

 おそらくは午後8時すぎの出発なら10時までに到着できる可能性もあるとして、離陸を決断したのであろうが、それ自体は間違いとは言い切れないだろう。パイロットも強い偏西風(向い風)に対して速度が得られる高度を選んで、精一杯のフライトをしたと思う。