その意味で、G7の国の首脳を運ぶ政府専用機を例にとっても、米国以外の国では安全第一の機種選定にはなっていないと言える。

日本人パイロットが世界で最も長く乗務した理由

 私事になるが、著者は2011年にボーイングから「最も多くジャンボジェットに乗務したパイロット」として、ジャンボジェットを設計したジョー・サッター氏のサイン入りモデルプレーンを記念品としていただいた。

B747の飛行時間で最多となり、筆者(右)は設計者であるジョー・サッター氏のサイン入りモデルプレーンを記念品としていただいた

 著者自身、記録を目標に仕事をしてきたわけではなく、この結果には驚いた。誰もが米国人パイロットだろうと思っていたのに、JALの日本人のパイロットが最も多く乗務した理由は、JALがパンアメリカン航空(パンナム、1991年に倒産)に続いてジャンボジェット登場の翌1970年から導入を開始したこと、路線の構成上、島国である日本から海を越えて遠方の目的地まで多くの乗客や貨物を輸送する必要があり、稼働時間が多くなったことなどが挙げられるだろう。

 また、米国のパイロットは前述したように、小型機から中型機そして大型機へと順に昇格していき、ジャンボジェットのパイロットになるうえで、米国では「Seniority Rule(先任権制度)」というものがあり、若くしてジャンボジェットのパイロットになるのは難しい。その結果、パイロット人生で最終機種となるジャンボジェットには長く乗れない事情もあった。

 いずれにしても著者自身、多くの緊急事態を経験しながらも、乗客乗員から1人のけが人も出さずに空の人生を終えることができたのも、このジャンボジェットのおかげだと心から感謝している。